『成功したらどうしようとは考えているが、失敗することは全然考えていない。自信がない時は絶対にいい結果は出せない。自己暗示ではないが、たいていは勝てるつもりいる。』、と彼は私の目をまっすぐに見つめて言いました。そこに存在しているのはどんなことがあっても揺るがない、強い意志だったのです。オトナになりきれていない私にはその意志の強さがどれほどのものなのか、その意志によってどんな結果を生み出すことができるのかが理解できませんでした。とりあえず、いつでも強気でいればいいんだ、と自分なりに解釈していたのです。その解釈がまちがっていたものだと気づくまでには時間がかかりました。いつでも強気でいることと、どんなことがあっても揺るがない強い意志には大きなちがいがあったのです。いつでも強気でいるのは、正直なところ気疲れてしまうことがありました。たまぁに、今日くらいは強気じゃなくてもいいかな、なんて思ったりもしました。しかし、揺るがない強い意志は疲れることがありません。自分の中にある強い気持ちだから、自分で今日はどうしようか、などと考える必要がないからです。いつでも強気でいようとすることは常に意識して行なう行為であったのです。このことに気づけたのも彼のおかげでした。いつでも強気でいることを実行していた私はある日、彼に何気なく聞いてみたのです。「いつも勝てるつもりでいて、疲れることはない?」、と。彼の答えはもちろん、「疲れることはない」でした。そのあと、なぜ疲れることがないのか、私は考えました。その結果が、意識していることと意識していないことだとわかったのです。私は彼には助けてもらってばかりです。そろそろ恩返しをしなくてはいけないと思いますが…彼にとって、どんなことが恩返しになるのか。私はまたそこでなやんでしまうのです。こればかりは彼に聞くこともできません。さて、どうしたらよいでしょう?そんなときに出逢ったのが『幸福は香水に似たものである。人に振りかけると、自分にも必ず振りかかる。』という言葉でした。この言葉は彼に当てはまるものだと思いました。彼はいつも自分よりも自分以外の人を優先していました。だから私は願ったのです。私が幸福になったのだから、彼にも幸福が訪れますように、と。しかし、幸福を香水にたとえるなんて…私には真似することができないようなことでした。まあ、私は私なので、ほかの人の真似する必要はないのですけどね。その人にはその人の良さがあり、私には私の良さがある。彼に言われてからコレだけはずっと信じていました。そして言葉のチカラとは凄いことだと、後に知ることとなるのです。
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