『かけがえのない人間になるためには、いつでも他人と違っていなければならない』、と言って彼は話し出しました。それは人生を全うするために必要不可欠のことであり、どんなときでも忘れてはいけないことでした。世界中、どこを探したって、同じ人間は存在しません。どこかしら似た人間は存在することでしょう。しかし、まったく同じであり、異なる部分がまったくない、ということはないのです。そうですね…仮に、貴方にとってかけがえのない人が2人いたとします。縁起の悪いお話で申し訳ありませんが、その2人が危ない状況にいます。貴方が助けられるのはどちらか1人だけです。…と、まあ、こんな感じになってしまったらどうしましょう?貴方はきっと、どちらも助けようとするかもしれません。あるいは、どちらも助けようとはしないかもしれません。…ここから先のお話は推測も混じりますが、こういったことが起こらないように、同じ人間は存在していないのではないでしょうか?似ていたとしても、同じにならないように、違う部分を持ちなさいと彼は伝えたかったのだと思っています。誰にとっても、かけがえのない人は必ずいます。誰だってかけがえのない人になれるんです。そのためには、ずば抜けていて胸を張って誇れる何かが必要なんじゃないかと考えています。もしかしたら、それすらも必要ないのかもしれませんけど。でも、人間は誰しも必ず、ひとつは誇れることがあるはずです。どんな人だって、他の人にはない誇れることがあるはずなんです。それは自分で気づいているか、もしくは他人から指摘されて気づくか、気づかずに終わってしまうか…どうなるかはわかりません。ただ、忘れないでいてほしいんです。誰にだって誇れることが必ずあることを。小さくたっていいじゃないですか。他の人にはないものを貴方は持っているんですよ?それだけで十分じゃないですか。でも、人間は欲深くなりますからね。もっと、もっと…と思ってしまうかもしれません。それはそれで仕方ないとしましょう。だからと言って諦めたりすることはありません。小さくても誇れるものがあるのなら、それを磨き上げていけばいいじゃないですか。磨き上げて、大切に大切に育てていったら…いつか、大きくなるものです。そうしたら、今よりももっと誇ることができるでしょう?いくつもの誇れるものを持っているよりは、ひとつだけ誇れるものを持っていたほうが輝いて見える気がします。ひとつだけだったら、大切にすることができますよね。手を抜くことはできませんよね。たくさんあったら、大切にできないものがあるかもしれないし、手を抜いてしまうものがあるかもしれない。だから、誇れるものをたくさん持つ必要はないと考えています。みなさんの考えはどちらでしょう?ただ、どちらに関してもいえることがあるとすれば、誇れるものを持っているという素晴らしさですね。“これだけは誰にも負けない、負けたくない”この気持ちは大切にするべきだと思います。いえ、大切にしなくちゃいけないんです。他人との競争ではなく、自分との競争に負けそうになったときにこの気持ちが助けてくれます。勇気を与えてくれるんですよね。だから、くどいようですけど大切にしてください。無理にかけがえのない人間になろうとする必要はありません。貴方がここに存在しているだけで、十分にかけがえのない存在になっているんですから。もっと特別になるために他人と違うものを持っている必要がある、それだけのことなんです。難しく考えすぎないでください。貴方のことをかけがえのない存在だと思っている人は必ず存在しているんですからね。
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